Deep Knowledge(DeepThrive)

取引承認プロセスをここまで自由に⁉~パイプラインルールを使った柔軟なフロー構築~

作成者: 芳賀 航|Oct 20, 2026, 10:20:26 AM

現場が直面する「承認機能」の壁

営業活動において、提案する商材のスペックや見積もり金額の妥当性を保つため、上長による「承認」をプロセスに組み込みたいと考えるセールス部門の方は多いのではないでしょうか。

HubSpotのSales Hub Enterpriseには、特定の取引ステージから次のステージへ進む際に、指定したユーザーの承認を必須にできる便利な「取引の承認機能」が標準搭載されています。しかし、実際の業務に当てはめようとすると、以下の2つの仕様が運用上の課題となることがあります。


  1. 承認待ち期間中のプロパティ編集ができてしまう

    次のステージへの移動は制限できても、承認を待っている間に担当営業が取引レコード内の金額や商材などのプロパティを上書きできてしまいます。これでは、上長が確認した内容と最終的な提案内容にズレが生じるリスクがあります。




  2. 例外的なステージスキップが許容されない

    標準の承認機能は非常に厳格なため、いかなる場合でもそのステージをスキップして進むことができません。例えば、「初回商談で値引きなしの基本プランを説明したところ、その場で即決(口頭受注)いただいた」といった例外的なケースでも、ワークフロー等で承認プロセスをスキップさせる運用が不可能です。



柔軟かつ安全なプロセスを実現したイメージ

これらの課題は、標準の承認機能を使わず、HubSpotのパイプラインステージの既存機能を少し工夫して組み合わせることで解決できます。

この新しい構成を導入すると、取引が「承認待ち」の段階に入った瞬間にプロパティがロックされ、提案内容が後から変更される心配がなくなります。上長は、提示された情報を信頼してスムーズに確認作業を進めることができます。

同時に、初回商談での即決など、承認プロセスを通す必要のない例外的な案件が発生した場合は、取引画面に設置した専用ボタンをクリックするだけで、営業担当者自ら「口頭受注」などのステージへ直接スキップさせることが可能になります。管理の堅牢さと、営業活動のスピードダウンを防ぐ柔軟性を両立できるのが大きな利点です。


スキップ可能な「編集ロック付き」承認フローの設定方法

ここからは、具体的な構築手順を4つのステップで解説します。


ステップ1:承認用の新しい取引ステージを作成する

まずは、パイプラインのなかに承認を行うための専用ステージを設けます。

  1. ナビゲーションバーの設定アイコン(歯車マーク)をクリックし、左側のメニューから[オブジェクト]>[取引]を選択する

  2. [パイプライン]タブを開き、対象のパイプラインを選択する

  3. 新しい取引ステージを追加し、名前を「提案内容確認中」などの分かりやすい名称に設定して保存する

ステップ2:パイプラインルールで編集権限を制限する

次に、先ほど作成したステージに取引がある間は、プロパティを編集できないようにロックをかけます。

  1. 同じ[パイプライン]タブ内にある[パイプラインルール]タブに切り替える

  2. [取引のステージ省略を禁止]と[取引の編集を制限]というルールをオンにする

  3. 設定パネルで、制限をかける対象ステージとして「提案内容確認中」を選択する

  4. 対象外とする(編集を許可する)ユーザーとして、承認者である上長やシステム管理者のみを指定し、保存する

ステップ3:ステージスキップ用のワークフローを作成する

例外的な案件を自動的に次の段階へ進めるための仕組みを作ります。

  1. メインメニューから[自動化]>[ワークフロー]に移動し、[ワークフローを作成]>[ゼロから作成]を選択する

  2. ベースとなるオブジェクトを「取引」にする

  3. 登録トリガーは設定せず、「手動登録のみ」となるようにする

  4. アクションを追加し、[レコードのプロパティ値を設定]を選択する

  5. 対象のプロパティを「取引ステージ」、変更後の値を「口頭受注(または任意の受注ステージ)」に設定し、ワークフローを有効化する

ステップ4:取引レコード画面に実行ボタンを配置する

最後に、担当営業がレコード画面から直接ステップ3のワークフローを呼び出せるようにします。

  1. 設定アイコンから[オブジェクト]>[取引]>[レコードのカスタマイズ]タブを開く

  2. レコードの右側サイドバー(または中央ペイン)のビューをカスタマイズする

  3. [カードを追加]からワークフロー拡張機能などのボタンを追加し、ステップ3で作成した「ステージスキップ用ワークフロー」を手動で実行できるように配置する

運用上のヒント:機能の使い分けについて

標準の承認機能が持つ「編集制限がない」「スキップ不可」という仕様は、決してシステムの欠陥ではありません。
例えば、
「承認待ちの間も、顧客からの新しいヒアリング情報をプロパティに追記し続けたい」
「コンプライアンス上、例外決済を絶対に許容してはならない」
といった業務要件であれば、標準機能の方が適しています。

自社の営業プロセスが何を求めているのかを整理し、標準機能と今回のカスタマイズ構成を比較検討して、最適な手法を選択してください。