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SaaSの命題「結局、今月は何件増えたの?」をHubSpotで可視化する方法

作成者: 芳賀 航|Jun 12, 2026 9:16:17 AM

SaaSや保守、リースといったサブスクリプション型のビジネスモデルを運営していると、営業会議で必ずと言っていいほど直面する問いがあります。

「今月の受注件数は素晴らしい。……で、解約を含めた『純増』は何件なんだ?」

新規受注を追うことは営業チームの活気につながりますが、経営の健全性を測るには、裏側で発生している解約を差し引いた実数が欠かせません。
しかし、HubSpotの標準的なレポート機能を使っていると、意外な壁にぶつかります。

「受注レポート」と「解約レポート」を別々に作ることはできても、それらを一つの指標として合算(受注1 - 解約1 = 0)し、さらに「純増目標」として管理する設定がデフォルトでは用意されていないのです。

その結果、スプレッドシートにデータをエクスポートして加工したり、複数のレポートを行ったり来たりしながら頭の中で計算したり……といった、非生産的な作業が発生していないでしょうか。

「純増数」がリアルタイムに動くダッシュボードの実現

もし、特別な外部ツールを使わずに、HubSpotだけで以下の状態が作れるとしたらどうでしょう。

  • 取引が「受注」になれば自動で「+1」がカウントされる。
  • 取引が「解約」になれば自動で「-1」がマイナスカウントされる。
  • これらを合計(SUM)した数値が、チームの月間目標に対して「あと何件で達成か」をプログレスバーで示してくれる。

これが実現すると、営業・カスタマーサクセス・経営陣が同じ「純増」という数字を共通言語にできるようになります。

今回は、HubSpotの「カスタムプロパティ」「ワークフロー」「目標(ゴール)」機能を組み合わせた、現場で即導入できる構築手順を詳しく解説します。

【設定マニュアル】HubSpot 純増(受注-解約)目標管理の構築手順

ここからは、具体的なシステム構成に入ります。

設定は大きく分けて5つのステップで進行します。

ステップ1:純増計算用の「カスタムプロパティ」を2つ作成する
ステップ2:「ワークフロー」で数値と日付を自動入力させる
ステップ3:「カスタム目標」を定義する
ステップ4:目標値(ターゲット)と対象期間を割り当てる
ステップ5:目標をレポート化する

ステップ1:純増計算用の「カスタムプロパティ」を2つ作成する

まずは、裏側で計算と集計を行うための「数値の箱」と「日付の箱」を用意します。

  1. 右上の 歯車アイコン(設定) > 左メニューの [プロパティー] を開く

  2. オブジェクトを [取引] に指定し、[プロパティーを作成] をクリックし、以下の2つを作成する
プロパティ名 フィールドタイプ 役割
純増カウント用 数値 受注なら「1」、解約なら「-1」を格納する場所
純増実績日 日付選択 目標期間(○月分など)を判定するための日付

注意点: 「純増カウント用」は、後ほど合計値を算出するため、必ず数値形式で作成してください。



ステップ2:「ワークフロー」で数値と日付を自動入力させる

営業担当者が手入力する手間を省くため、取引のステータスが変わった瞬間に自動で値が入る仕組みを作ります。

  1. [自動化] > [ワークフロー] から [ゼロから作成] > [取引ベース] を選択する

  2. トリガー(開始条件)を設定する
    • [取引ステージ] の値が変化


  3. IF/THEN ブランチ(分岐)を作成する
    • アクションを追加し、「受注」の分岐と「解約」の分岐を作成


  4. アクションを設定(受注分岐の下)する
    • [プロパティー値を設定] を選び、純増カウント用1 を入力


    • 再度 [プロパティー値を設定] を選び、純増実績日 に [処理の日付(Step date)] を設定


  5. アクションを設定(解約分岐の下)する
    • [プロパティー値を設定] を選び、純増カウント用-1 を入力


    • 再度 [プロパティー値を設定] を選び、純増実績日 に [処理の日付(Step date)] を設定

設定後、ワークフローをオンにします。過去のデータも集計に含めたい場合は、保存時に「既存のレコードも登録する」を選択してください。

ステップ3:「カスタム目標」を定義する

次に、ステップ2で付与された「+1」と「-1」を足し合わせる計算ルールを作ります。

  1. [レポート] > [目標] を開き、右上の [目標を作成] > [ゼロから作成] を選ぶ

  2. 以下の通りに定義して次へ進む
    • 名前: 「月間純増目標」など
    • オブジェクト: 取引
    • プロパティー: 純増カウント用(ステップ1で作成したもの)
    • 集計タイプ: SUM(合計) * ※ここが設定の肝です。「COUNT(件数)」ではなく「SUM(合計)」にすることで、1 + (-1) = 0 の計算が成立します。
    • 日付プロパティー: 純増実績日

 

ステップ4:目標値(ターゲット)と対象期間を割り当てる

  1. パフォーマンス設定をする
     目標を持たせるユーザーやチームを選択します

  2. 期間の設定をする
    目標期間を「毎月」「四半期」「毎年」から選びます
    • ※HubSpotには「半期」の単位がないため、四半期を合算するか年間目標で運用するのが一般的です。

  3. 目標値を入力する
    該当期間の枠に「純増の目標件数」を入力し、保存して完了です

これで、目標画面に「実績(受注マイナス解約) / 目標」の進捗バーが表示されるようになります。

ステップ5:目標をレポート化する

最後に、推移を視覚化してダッシュボードでいつでも確認できるようにします。

  1. ステップ3~4で作成した目標の画面の中からダッシュボードに追加したいグラフを選んで右上の三点リーダーをクリックして「レポートを保存」を選択


  2. レポートの名前、説明を入力し、追加したいダッシュボードの名前を選択して「保存時手追加」


  3. 先ほど選択したダッシュボードにレポートが追加されている!

これにより、「先月は受注が多かったが解約も多く、純増としては伸び悩んだ」「今月は解約が抑えられているため、受注数以上のインパクトが出ている」といった傾向が一目で把握できるようになります。

まとめ

現場の入力負荷を上げず、HubSpotにあるデータだけで「攻め(受注)」と「守り(解約)」の両面を管理する。この体制構築が、持続可能な事業成長の第一歩となります。

是非、皆さんもこの記事を参考に「今月何件増えたの?」を可視化してみてください。