HubSpotで売上金額などを管理する際、「基本は自動計算にしたいが、イレギュラーな案件だけ手で金額を入力したい」というケースがあります。
しかし、HubSpotの計算プロパティーは算出された結果を表示する専用の項目であるため、直接数値を編集することはできません。
この記事では、この課題を解決し、自動計算と手入力をひとつのプロパティーで管理するための具体的な設定方法を解説します。
例えば、人材紹介ビジネスなどで以下のような運用を行いたい場合を想定します。
【やりたいこと】
「売上金額」は、基本的に「決定年収」と「紹介料率」を掛け合わせて自動算出したい。
ただし、例外的な契約の際は、計算式に当てはまらない金額を手入力したい。
レポートや一覧画面での見やすさを考慮し、最終的な「売上金額」は1つのプロパティーにまとめて管理したい。
【問題点】
売上金額を「計算プロパティー」で作成してしまうと、計算結果しか受け付けないため、例外が発生した際に現場の担当者が金額を直接書き換えることができません。
具体的には、以下のような「例外」が発生した状況で役立ちます。
状況①:定額(固定額)で契約したとき
通常: 年収500万円 × 35% = 175万円
例外: クライアントと交渉し「今回は料率ではなく、一律100万円の手数料」で合意した。
運用: 「紹介料率」を空欄にし、手入力用プロパティーに「1,000,000」と入力する。
状況②:特別な値引きやキャンペーンを適用したとき
通常: 年収600万円 × 30% = 180万円
例外: 「複数名採用してくれたので、今回の紹介料は特別に一律20万円値引きします」という約束をした。(=160万円にしたい)
運用: 「紹介料率」を空欄にし、手入力用プロパティーに「1,600,000」と入力する。
状況③:最低保証金額(ミニマムフィー)のルールがあるとき
通常: 年収の30%を請求。
例外: 契約上「年収の30%、もしくは最低80万円のどちらか高い方」を採用。年収200万円のアルバイト採用が決まった場合、計算上は60万円だが、最低保証の80万円を請求したい。
運用: 「紹介料率」を空欄にし、手入力用プロパティーに「800,000」と入力する。
この問題を解決するため、計算プロパティーの「カスタム数式」機能を活用して条件分岐を設定します。
具体的には、「計算用のプロパティーに値が入力されている場合のみ計算を行い、値が空欄の場合は別途用意した『手入力専用プロパティー』の値を表示する」というロジックを組みます。
現場の運用ルールとしては以下のようになります。
通常時:「決定年収」と「紹介料率」に入力する(自動計算される)。
例外時:「決定年収」 もしくは「紹介料率」を空欄にし、「手入力専用プロパティー」に直接金額を入力する(手入力した金額がそのまま売上金額として表示される)。
この仕組みを構築することで、入力の手間を省きつつ、イレギュラーな契約にも対応できるデータ構造になります。
事前の準備として、対象のオブジェクト(取引など)に以下の3つのプロパティーが作成されていることを前提として進めます。これらはすべて同じオブジェクト内に作成してください。
決定年収 (数値)
紹介料率 (パーセンテージ)
手入力用_売上金額 (数値:例外的に手入力したい場合のみ使うもの)
ここから、最終的な「売上金額」を表示するための新しい計算プロパティーを作成していきます。
HubSpot画面右上の [歯車アイコン(設定)] をクリックします。
左側のメニューから [プロパティー] を選択します。
対象のオブジェクトを選び、右上の [プロパティーを作成] をクリックします。
基本情報を入力します。
グループ:任意のグループ
プロパティラベル:「売上金額」(※最終的な売上が表示される項目名)
入力後、[次へ] をクリックします。
フィールドタイプで [計算] を選択し、[計算を作成] をクリックします。
計算タイプのプルダウンから [カスタム数式 (Custom equation)] を選択します。
数式エディターに、以下のロジックを入力します。
if(is_known([決定年収]) and is_known([紹介料率]), [決定年収] * [紹介料率], [手入力用_売上金額])
※意味:「決定年収」と「紹介料率」の両方に値があれば「年収×率」を計算し、そうでなければ「手入力用_売上金額」の値をそのまま表示する。
[作成] をクリックして完了です。
この設定により、条件に応じた金額が「売上金額」プロパティーへ即座に反映されるようになります。現場の担当者にとっても直感的で分かりやすい運用が可能です。
「通常時(自動計算)」と「例外時(手入力)」の2つのパターンがどのように画面に反映されるかを解説します。
パターン1:通常時(自動計算が優先されるケース)
まずは、基本ルールである「決定年収 × 紹介料率」が正しく計算されるかを確認します。
決定年収:5,000,000
紹介料率:20%
手入力用_売上金額:(値があってもなくても影響しません)
この状態のとき、「売上金額」の項目には即座に計算結果の「1,000,000」が反映されます。組んだロジック(数式)により、「決定年収」と「紹介料率」の両方に値が入っている場合は、自動計算が最優先されます。
仮に、担当者が間違えて「手入力用_売上金額」にも何らかの数値を入力してしまったとしても、紹介料率に値が入っている限りは計算結果(この場合は100万円)が「売上金額」として出力されるため、二重計上などの入力ミスを防ぐことができます。
パターン2:例外時(手入力が反映されるケース)
次に、イレギュラーな契約が発生し、計算式を使わずに「手入力」したい場合の動きを確認します。 今回は例として、イレギュラーな固定額(80万円)で合意したケースを想定します。
決定年収:5,000,000
紹介料率:空欄(値を消す)
手入力用_売上金額:800,000
「紹介料率」の値を消して空欄(--)にしたことで計算の条件から外れ、「手入力用_売上金額」に入力した「800,000」が、そのまま最終的な「売上金額」として表示されます。手動で金額を調整したいときは、「紹介料率を空欄にする」ことがスイッチになります。
現場の担当者には、「イレギュラーな金額の時は、料率を消して手入力用の枠に金額を入れてね」と伝えるだけで、誰でも迷わず操作が可能です。