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採用の“穴”はどこにある?|HubSpotでフェーズ別 辞退率を見える化する裏技

作成者: きっしー|Oct 8, 2026, 10:29:28 AM

採用の数字を眺めていて、こんな感覚になったことはないでしょうか。応募は来ているのに面接まで残らない。受付シートを送ったあたりで返信が止まる。一次面接の日程調整で、いつの間にか連絡が途絶える——。現場の肌感では「なんとなく、あのあたりで抜けている」と分かっているのに、いざ「どのフェーズの辞退率が一番高いんですか?」と聞かれると、はっきり答えられない。

この記事は、そんなモヤモヤを抱える採用担当・人事・採用マーケティングの方に向けて書いています。中途採用などで応募から採用まで複数の選考フェーズがあり、その進捗をHubSpotで管理している。途中で辞退する応募者はいるものの、どのフェーズで抜けているのかを数字で説明できない。だから、案内文や連絡のタイミング、面接設定のやり方を「どこから見直せばいいのか」を決めきれない——。そんな状況を想定しています。

やることはシンプルで、フェーズごとの辞退率をHubSpotのレポートで見えるようにするだけです。専門的なコーディングは必要なく、プロパティ・ワークフロー・レポートといった標準機能だけで組めます。この記事では、その“なんとなく”を数字に変えるところまでを、順を追って説明します。

 

課題:「どこで辞退されているのか」が数字で言えない

今回は、次のような選考フェーズが並んでいるとします。

受付シート回答待ち → 書類選考完了 → 一次面接日程調整待ち → 一次面接設定完了 → 一次面接完了 → 二次面接日程調整待ち → 二次面接設定完了 → 二次面接完了 → 内定通知 → 内定承諾 → 採用

選考フェーズごとの辞退率さえ見えれば、「受付シート回答待ちの辞退率が高いから、案内文とリマインドを見直そう」といった判断ができます。ところが、HubSpotでこれを素直に出そうとすると壁に当たります。

多くの方が、まずこう考えます。「選考フェーズはステージ(ステータス)で管理しているんだから、“辞退”になった人を数えて、フェーズごとに分ければいいのでは?」

ここで一つ目の壁です。

辞退した瞬間、直前のフェーズが消えてしまう。

選考フェーズを1つのプロパティ(取引ステージなど)で管理していると、値は変わるたびに上書きされます。応募者が辞退した時点で、その人のフェーズはもう「辞退」です。「一次面接完了のあとに辞退したのか、それとも書類選考の段階で抜けたのか」——一番知りたいはずの“どこで”が、記録に残っていないのです。

「だったらファネルレポートやステージ移行のレポートがある」と思うかもしれません。ここで二つ目の壁です。

“そのフェーズに到達したことのある人数”という母数が作れない。

現在のステージだけを数えると、先へ進んだ人は前のフェーズのカウントから抜けてしまいます。すると「受付シート回答待ちに到達した延べ人数」が積み上がらず、辞退率の分母になりません。通過数は見えても、「そのフェーズを起点にした辞退率」までは届かない、というのが標準機能の限界です。

つまり、辞退率を出すには2つの情報を、上書きされない形で1件ずつ残しておく必要があります。

  • そのフェーズに到達したという履歴
  • そのフェーズで辞退したという履歴

実現イメージ:フェーズを通るたびに「スタンプ」を押す

やることを一言でいうと、スタンプカードです。

応募者が各フェーズを通過するたびに「到達スタンプ」を押し、もし辞退したら、その直前のフェーズに「辞退スタンプ」を押す。スタンプは一度押したら消えないので、選考が進んでも履歴はそのまま残ります。

フェーズ別の辞退率は、こう表せます。

そのフェーズの辞退率 = そのフェーズで辞退した人数 ÷ そのフェーズに到達したことのある人数

たとえば受付シート回答待ちなら、

受付シート回答待ちの辞退率 = 受付シート回答待ちで辞退した数 ÷ 受付シート回答待ちに到達した数

分子も分母もスタンプの合計です。だからレポートの式フィールドで割るだけで、フェーズごとの辞退率が出せます。

 

実現方法:5ステップで設定する

Step1. スタンプを貯める「入れ物」を用意する(プロパティ設計)

まず、記録の受け皿になるプロパティを3種類作ります。設置先は、選考フェーズを管理しているオブジェクトに合わせてください(応募者をコンタクトで管理しているなら、コンタクトに作ります。以下は式フィールドの例に合わせてコンタクト前提で書きます)。

(1) 辞退になった選考フェーズ(1つ)
辞退する直前にいたフェーズを保持します。ドロップダウン(単一選択)で、選択肢に各フェーズ名を入れておきます。

(2) 各フェーズの「到達スタンプ」(フェーズ数分)
そのフェーズに到達したら「1」を入れます。形式は数値がおすすめです。レポートで合計するとそのまま到達人数になるからです。

(3) 各フェーズの「辞退スタンプ」(フェーズ数分)
そのフェーズで辞退したら「1」を入れます。こちらも数値で統一します。

 

Step2. 通過したら到達スタンプを押す(ワークフロー)

選考フェーズが各フェーズに変わったことをトリガーに、対応する到達スタンプへ「1」を入れます。

  • トリガー:選考フェーズが「受付シート回答待ち」になったとき
  • アクション:受付シート回答待ちの到達スタンプ = 1

これをフェーズごとに用意します。1つのワークフロー内で分岐にまとめても、フェーズごとに分けてもかまいません。

ここで大事なのは、一度押した到達スタンプは、先のフェーズに進んでも消さないこと。これで「そのフェーズに到達したことのある延べ人数」=分母が、きちんと積み上がっていきます。

 

Step3. 辞退する“直前”のフェーズを捕まえる

先ほどの壁——「辞退になった瞬間、直前のフェーズが分からない」を、ここで解きます。

辞退へ変わったときには、現在のフェーズはもう「辞退」になっています。そこで、選考フェーズが「辞退」に変わったタイミングで、その直前にいたフェーズを「辞退になった選考フェーズ」プロパティに書き込むようにします。

これで、辞退した人ごとに「どのフェーズで抜けたか」が、1つの値として残ります。

 

Step4. 辞退したフェーズにスタンプを押す(ワークフロー)

「辞退になった選考フェーズ」に値が入ったことをトリガーに、その値に応じて、対応する辞退スタンプへ「1」を入れます。

  • トリガー:「辞退になった選考フェーズ」の値が変化したとき
  • アクション(if/then 分岐):
    • 「受付シート回答待ち」→ 受付シート回答待ちで辞退 = 1
    • 「書類選考完了」→ 書類選考完了で辞退 = 1
    • 「一次面接日程調整待ち」→ 一次面接日程調整待ちで辞退 = 1
    • 「一次面接設定完了」→ 一次面接設定完了で辞退 = 1
    • 「一次面接完了」→ 一次面接完了で辞退 = 1
      etc...

辞退スタンプは、抜けた1フェーズにだけ押されます(直前フェーズは1つなので)。

 

Step5. 式フィールドで辞退率にして、並べて見る

スタンプがそろえば、あとはレポートで割るだけです。コンタクトベースのレポートを作り、式フィールドで「辞退スタンプの合計 ÷ 到達スタンプの合計」を計算します。

受付シート回答待ちの例はこうです。

SUM([CONTACT.uketsukeshitokaitoumachidejitai]) / SUM([CONTACT.uketsukeshitokaitoumachitoutatsusutanpu])

 

 

X軸を作成日、Y軸を作成した式フィールドを挿入することで、月別の辞退率の推移を可視化することができます。以下キャプチャは受付シート回答待ちの選考フェーズで辞退した率になります。

同じ要領で、その他のフェーズ分の式フィールドを用意すれば、各選考フェーズ事の辞退率を月次で追っていくことが可能になります。(以下は5つ分の例)

選考フェーズ 辞退率の式フィールド
受付シート回答待ち SUM([CONTACT.uketsukeshitokaitoumachidejitai]) / SUM([CONTACT.uketsukeshitokaitoumachitoutatsusutanpu])
書類選考完了 SUM([CONTACT.shoruisenkoukanryoudejitai]) / SUM([CONTACT.shoruisenkoukanryoutoutatsusutanpu])
一次面接日程調整待ち SUM([CONTACT.ichijimensetsunitteichouseimachidejitai]) / SUM([CONTACT.ichijimensetsunitteichouseimachitoutatsusutanpu])
一次面接設定完了 SUM([CONTACT.ichijimensetsuseiteikanryoudejitai]) / SUM([CONTACT.ichijimensetsuseiteikanryoutoutatsusutanpu])
一次面接完了 SUM([CONTACT.ichijimensetsukanryoudejitai]) / SUM([CONTACT.ichijimensetsukanryoutoutatsusutanpu])

パーセントにしたい場合は式に * 100 を足すか、表示形式をパーセントに設定します。5フェーズを横に並べれば、「どこの辞退率が高いか」が一目で分かる状態になります。冒頭の“なんとなく”が、ここでようやく数字になります。

 

補足:つまずきやすい点を3つ

  • 過去の応募者には遡らない:ワークフローは設定後の変化にだけ反応します。過去分の辞退率も見たい場合は、リストやインポートで値を補完してください。
  • 到達スタンプは消さない:分母は「到達したことのある延べ人数」です。先へ進んでもスタンプを残し続けるのが前提になります。
  • 数値の「1」で統一する:チェックボックスでも作れますが、合計計算の安定性を考えると、数値で押していくほうが安心です。