HubSpotを活用してグローバル展開を進める企業にとって、避けて通れないのが「為替変動」のリスク管理です。複数の外貨で商談を行う際、日本円換算での正確な売上や利益を把握し続けるのは容易ではありません。
HubSpotの通貨機能と計算プロパティを組み合わせて、精度の高い多通貨管理を実現する方法を解説します。
海外企業との取引がある場合、多くの担当者が以下のような悩みを抱えています。
見積時と決済時の乖離: 見積書を出した時点の為替レートと、実際に受注した時点のレートが異なるため、日本円ベースでの正確な着地予想が立てにくい。
手動換算の限界: Excelなどで都度レートを調べて計算しているが、転記ミスが発生しやすく、リアルタイムな数値が追えない。
管理通貨の混在: ドル建ての案件と円建ての案件が混在し、ダッシュボード上で全体の合計金額を正しく把握できない。
これらの課題は、HubSpotの標準機能と少しの工夫で解決可能です。
HubSpotを正しく設定すると、システムが自動的に最新の為替レートを取得し、外貨での取引金額を即座に自社のメイン通貨(日本円など)へ換算します。
さらに、単に「今のレート」で計算するだけでなく、「特定の日付(見積日や契約日など)のレート」を固定して計算することも可能です。
これにより、以下の2つの数値を並べて比較できるようになります。
見積時点の日本円換算額(過去の特定レートで固定)
現時点の日本円換算額(最新の自動更新レート)
為替変動によってどれだけ利益が増減したのかが可視化され、より戦略的な経営判断が可能になります。
それでは、実際にHubSpotで「見積時点の為替レート」を用いた計算プロパティを作成する手順を説明します。
まず、自社の基軸通貨と取引で使用する外貨を設定します。
設定場所: 設定(歯車アイコン) > オブジェクト > 取引 > 通貨
手順:
「通貨を追加」から、自社のメイン通貨(例:JPY)と使用する外貨(例:EUR)を追加します。
HubSpotには、月次、四半期、または年単位で為替レートを自動更新する機能があります。これを有効にすることで、常に市場に近いレートが反映されます。
これにより、取引レコードに「金額(EUR)」を入力すると、「会社通貨の金額」というプロパティに、最新レートで換算された日本円が自動表示されるようになります。
特定の過去レートを呼び出すための「基準となる日」を決めるプロパティを作成します。
プロパティ名: 見積書作成日
フィールドタイプ: 日付
ここがポイントです。特定の日のレートを呼び出す関数 dated_exchange_rate を使用します。
プロパティ名: 見積時点金額(円)
フィールドタイプ: 計算
計算式の構築: 「数式を編集」を選択し、以下の式を入力します。
(dated_exchange_rate("EUR", [見積書作成日]) * [金額])
補足説明: dated_exchange_rate 関数は、第一引数に通貨コード、第二引数に参照したい日付プロパティを指定することで、その特定日のレートを取得する関数です。
例えば、ユーロで取引する商談があり、以下の数値を入力したとします。
金額: 10,000 EUR
見積書作成日: 2025/01/01
このとき、HubSpotの画面上では以下のように表示されます。
見積時点金額(円): 2025/01/01時点のレートで計算された円
会社通貨の金額: 「今日」の最新レートで計算された円
この2つのプロパティを並べることで、「商談開始時から現在までに、為替の影響でどれだけ円建ての売上が変わったか」が一目で分かります。
このデータはレポート機能で集計できるため、全社レベルでの為替差損益の予測や、営業戦略の修正に大きく貢献します。
HubSpotの為替機能と計算プロパティを組み合わせることで、複雑な外貨計算を自動化し、経営の透明性を高めることができます。
次に行うべきステップ: まずは社内で使用している通貨をHubSpotに登録し、過去の商談データを用いて「見積時点金額(円)」の計算プロパティが正しく動作するか検証してみることをお勧めします。
もし、特定のポータルでの関数記述に不安がある場合や、より複雑な利益率の計算(原価も外貨の場合など)が必要であれば、いつでもご相談ください。